「メンバーとの1on1、正直何を話せばいいか分からない…」
「グループミーティングはやってるけど、個別に話すのは時間もかかるし、面倒だ」
その「面倒くさい」が、あなたのチーム崩壊の第一歩かもしれません。
ネットワークビジネス(MLM)において、組織が崩れる最大の原因は「孤独」と「すれ違い」です。
グループミーティングでは元気よく手を挙げ、輝いて見えるメンバーも、水面下では深刻な悩みを抱え、退会届を握りしめているかもしれないのです。
この記事でわかること
- なぜグループミーティングだけでは絶対にダメなのか(1on1の本当の目的)
- 9割のリーダーが陥る「やってはいけない1on1」の典型的なワナ
- メンバーが自分で答えを見つけ出す「コーチング型1on1」の進め方
なぜ、MLMチームに「グループミーティング」だけでは不十分なのか?

「チーム全体でのミーティングは毎週やっているから大丈夫」。
そう思っているリーダーは多いですが、それは大きな勘違いです。
グループミーティングは「情報の共有」と「熱量の伝播」には有効ですが、「個人のケア」という点では致命的な欠陥があります。
公の場では言えない「本音」と「不安」
グループミーティングは、いわば「舞台」です。
前向きな発言が求められ、「うまくいっています!」とアピールする場になりがちです。
その裏で抱えている「今月、まだ1件もアポが取れていません」という焦りや、「アップラインの〇〇さんの言い方がキツくて辛い」といった人間関係の悩みは、公の場では絶対に口にできません。
1on1は、その「言えない本音」を安全に吐き出してもらうための聖域(サンクチュアリ)なのです。
孤独な個人事業主の集まり ― 帰属意識の醸成
MLMのメンバーは、雇用関係のない個人事業主の集まりです。
だからこそ、放っておくと「自分は一人だ」という孤独感に苛まれがちです。
1on1は、「私はあなた個人をちゃんと見ていますよ」というリーダーからの最強のメッセージです。
「その他大勢」ではなく「たった一人の大切なパートナー」として扱われる経験こそが、メンバーの孤独を溶かし、チームへの帰属意識を育みます。
「あなただけ」を見ているという最強のメッセージ
グループLINEで「みんな頑張れ!」と送る100通のメッセージより、「〇〇さんは最近どう?」という1通の個別メッセージの方が、人の心は動きます。
1on1ミーティングとは、その個別メッセージを、45分から1時間かけてじっくりと行う行為です。
「あなたのために、私は時間という命を使います」
この非言語的なメッセージこそが、何よりも強い信頼関係を築くのです。
信頼関係を破壊する!リーダーが陥る「最悪な1on1」3つのパターン

しかし、やり方を間違えると、1on1は信頼関係を築くどころか破壊する凶器にもなります。
良かれと思ってやっている、9割のリーダーが陥る「最悪な1on1」のパターンを見ていきましょう。
パターン1:「説教・アドバイス型」 ― リーダーの武勇伝が始まる
メンバーが「うまくいかないんです…」と悩みを口にした瞬間、それを遮って「それはね、こうすればいいんだよ」とアドバイスを始めていませんか?
「俺の若い頃はこうだった」「もっと気合が足りない」
メンバーはあなたの武勇伝が聞きたいのではなく、ただ「辛いね」と共感してほしいだけかもしれません。
アドバイスは「毒」にもなります。
相手が求めていないアドバイスは、単なる「説教」であり、相手の自己肯定感を奪うだけです。
パターン2:「進捗管理・尋問型」 ― 「今月何件アポ取った?」
会社の上司と部下ではありません。
「それで、今月は何ポイントやったの?」
「アポは何件? リストは何人?」
数字で詰め寄る「尋問型」の1on1は、メンバーに恐怖心しか植え付けません。
メンバーはあなたと会うのが苦痛になり、やがて「嘘の報告」をするようになります。
そうなれば、もう組織としては末期症状です。
パターン3:「愚痴聞き・同調型」 ― ただのガス抜きで終わる
「わかるー、そのアップライン最悪だよね」「会社の方針もおかしいよね」
共感は大切ですが、ネガティブな愚痴に同調し、一緒に文句を言っているだけでは、何も解決しません。
その場はスッキリするかもしれませんが、それは「傷の舐め合い」です。
1on1のゴールは、ガス抜きではなく、メンバーが「じゃあ、自分はどうするか?」と次の一歩を踏み出すことです。
リーダーは、愚痴の海に一緒に溺れてはいけません。
「よかれと思って」アドバイスし続け、メンバーを潰したIリーダー

「もう相談するのが怖いです」
Iリーダーは熱血漢で、誰よりもメンバーの成功を願っていました。だからこそ、1on1でメンバーが悩みを口にすると、矢継ぎ早にアドバイスを浴びせていました。「それは君のやり方が悪い。俺の時はこうだった」「そのマインドじゃ成功できないよ」。Iリーダーは「よかれと思って」いましたが、メンバーは「また否定された」「正論で殴られた」と感じていました。次第に、Iリーダーの1on1では誰も本音を話さなくなり、当たり障りのない進捗報告だけが行われるようになりました。ある日、最も期待していたメンバーが退会届を持ってきました。「Iさんに相談すると、いつも自分がダメ出しされて終わる。もうあなたに相談するのが怖いんです」。Iリーダーの熱意は、傾聴という土台がなかったために、メンバーを潰す圧力になっていたのです。
1on1の成否は「マインドセット」で9割決まる

Iリーダーのようにならないために、テクニックの前に「心の在り方(マインドセット)」を整える必要があります。
あなたの役割は何なのかを再定義しましょう。
あなたの役割は「医者」ではなく「カウンセラー」
多くのリーダーは、メンバーの症状(問題)を聞いて、すぐに処方箋(解決策)を出そうとする「医者」になろうとします。
しかし、MLMの1on1で求められるのは、まず相手の心に寄り添い、感情を受け止め、本人が自ら答えを見つけるのを手伝う「カウンセラー」です。
答えはあなたが持っているのではなく、メンバー自身の中にあります。
「正解」を与えるな、「鏡」になれ
あなたが「正解」を与え続けると、メンバーはあなたなしでは何もできない「指示待ち人間」になります。
あなたの役割は、相手を映し出す「鏡」になることです。
「あなたは今、こう言ったけど、それは本当にやりたいこと?」
「さっき、〇〇という言葉を使った時、すごく目が輝いていたよ」
あなたが鏡になることで、メンバーは初めて自分自身を客観視でき、自分で答えに気づいていきます。
傾聴:相手の「感情」に焦点を当てる
1on1で聴くべきは、出来事(事実)ではありません。
その出来事に対して、メンバーが「どう感じたか」という感情です。
「アポが取れなかった(事実)」よりも、「アポが取れなくて、悔しかった、自分には才能がないと思って辛かった(感情)」を聴くのです。
感情が浄化されない限り、次の行動には移れません。
まずは、メンバーの心のデトックスを最優先してください。
メンバーが自走しだす!1on1ミーティング「4つの黄金ステップ」

マインドセットが整ったら、具体的な進め方です。
この4つのステップを踏むだけで、あなたの1on1は見違えるほど生産的になります。
ステップ1:アジェンダの共有とアイスブレイク(心理的安全性の確保)
いきなり本題に入ってはいけません。
まずは「今日は〇〇さんのために時間を取りました。何でも話してね」と、この場が安全であることを伝えます。
天気や最近の嬉しかったことなど、雑談(アイスブレイク)で心のガードを解きほぐします。
ステップ2:傾聴とデトックス(感情の吐き出し)
「最近、困ってることやモヤモヤしてることはない?」と問いかけ、相手の話を遮らずに最後まで聴きます。
(前回の記事で学んだ「ジャッジしない」「自分の話にすり替えない」「沈黙を恐れない」をここで実践します)
相手がスッキリした顔になるまで、徹底的に「器」になりましょう。
ステップ3:問いかけと内省(コーチング・フェーズ)
デトックスが終わったら、未来に視点を移します。
ここで「問いかけ(コーチング)」を使います。
「愚痴は分かった。じゃあ、本当はどうなったら最高?」
「そのために、まずできそうな小さな一歩は何だろう?」
アドバイス(Teaching)ではなく、問いかけ(Coaching)によって、相手に答えを見つけさせます。
ステップ4:ネクストアクションの確認(小さなコミットメント)
最後は必ず、具体的な「次の行動」を決めて終わります。
「では、次回の1on1までに、何をやってみる?」
ここで重要なのは、リーダーが決めるのではなく、本人の口から言わせることです。
「分かりました、明日リストを3人追加します」
自分で決めた小さなコミットメント(約束)が、自走の第一歩となります。
1on1で使える「魔法の質問」フレーズ集

ステップ3のコーチング・フェーズで何を聞けばいいか分からない、という方のために、万能な質問フレーズをいくつか紹介します。
- 現状把握:「今、一番うまくいってることは何?」「今、一番のボトルネック(障害)は何?」
- 理想の未来:「そもそも、なぜこのビジネスを始めたんだっけ?」「もし、何でもできるとしたら、本当はどうしたい?」
- 行動促進:「それを達成する上で、一番の障害になってるのは何だと思う?」「その障害を取り除くために、明日からできる小さな一歩は何?」
- サポート確認:「そのために、私にできるサポートはある?」
「問いかけ」だけで、停滞メンバーを覚醒させたJさんの1on1

答えを教えずに、答えを引き出した瞬間
Jリーダーのチームに、行動がピタリと止まってしまったメンバーKさんがいました。以前のJさんなら「なんで動かないんだ!」と説教していたでしょう。しかし、傾聴を学んだJさんは、1on1でKさんを責めませんでした。ただ、優しく問いかけました。「Kさん、最近元気ないけど、何かあった?」「・・・」「無理に話さなくていいよ。でも、Kさんが最初にこのビジネスを始めた時、どんな夢を語ってたか覚えてる?」。Kさんはポツリポツリと、子供の教育費や家族旅行の夢を語り始めました。Jさんは「そっか、そんな素敵な夢があったんだね。その夢、今はどうなってる?」と問い続けました。その瞬間、Kさんは堰を切ったように泣き出し、「私、何やってたんだろう…忘れてました。もう一度やってみます!」と自ら立ち上がったのです。Jさんは、答えを一切教えませんでした。ただ、Kさんが自分の原点を思い出すための「鏡」になっただけでした。
1on1で築く信頼が継続報酬型WEBビジネスの血流となる
Jさんが行った1on1は、組織において「血流」を良くする行為そのものです。特に、Webの仕組みとリアルの人間関係が融合する[継続報酬型WEBビジネス]において、この「血流」は生命線です。システムがどれだけ優れていても、組織の末端にいるメンバーの「心の詰まり」を放置すれば、組織は壊死します。定期的な1on1は、組織の毛細血管まで温かい血液(信頼と情報)を送り届け、メンバーの離脱を防ぎ、組織全体を健康に保つための最強のメンテナンスなのです。
1on1の頻度と時間、場所はどうすべきか?

最後に、1on1の具体的な運用方法について触れておきます。
ここでのポイントは「リーダーが疲弊しない」ことです。
リーダーが疲弊しないための「適切な距離感」
メンバー全員と毎週1時間…などと理想を掲げると、リーダーがパンクします。
・活発に動いているメンバー:月1回45分
・停滞しているメンバー:2週に1回30分
など、相手の状況に合わせてメリハリをつけましょう。
あなたが倒れては、元も子もありません。
オンライン1on1とリアル1on1の使い分け
効率を考えればオンライン(Zoom)が便利です。
普段の進捗確認や軽い相談はオンラインで十分です。
しかし、深い悩みがある時、信頼関係がまだ浅い時、あるいは逆に大きく褒めたい時。
こういう「ここぞ」という場面では、対面(リアル)のランチやお茶が絶大な効果を発揮します。
同じ空気を吸うことでしか伝わらない非言語情報が、関係性を一気に深めます。
「いつでも相談して」は機能しない。時間を「予約」させる重要性
「いつでも相談してね」というリーダーの言葉は、メンバーからすれば「いつ相談していいか分からない」のと同じです。
「毎月第3週の火曜日の14時から、あなただけの時間を45分確保したから」
このように、時間を「予約」し、システムとして組み込むことが重要です。
「私のために時間をブロックしてくれた」という事実が、メンバーの安心感に繋がります。
まとめ:1on1ミーティングは、リーダーに与えられた「最高の特権」である

1on1ミーティングを「面倒なタスク」と捉えるか、「最高の機会」と捉えるか。
それで、あなたのリーダーとしての器が決まります。
メンバーの成長を一番近くで見られる喜び
不安そうな顔で入ってきたメンバーが、1on1を終える頃にはスッキリした顔で「やります!」と宣言する。
その瞬間に立ち会えること。
これこそが、チームビルディングにおける最大の喜びであり、リーダーに与えられた最高の特権です。
あなたの「聴く1時間」が、誰かの人生を変えるかもしれない
たかが1時間。
されど1時間。
あなたが本気で相手の人生に耳を傾けたその時間が、メンバーの人生を根底から変えるターニングポイントになるかもしれません。
それほど、1on1には力が宿っています。
まずは一人のメンバーを、ランチに誘うことから始めよう
難しく考える必要はありません。
「最近どう?よかったらご飯でも行かない?」
その一言から、あなたのチームは変わります。




