「よし、今期のチーム目標はこれだ!…って掲げたはいいけど、なんかメンバーに全然響いてない気がする…」
「目標はあるはずなのに、日々の業務に追われて、結局誰も目標を意識していない。これじゃ達成できるわけないよな…」
「メンバーが目標達成に向けて、もっと主体的に、ワクワクしながら動いてくれるようにするには、どうすればいいんだろう?」
期の初めに意気揚々と掲げられたチーム目標。
しかし、数ヶ月後にはすっかり形骸化し、誰も意識しない「絵に描いた餅」になってしまっている——そんな経験はありませんか?
チームの力を結集し、大きな成果を生み出すためには、ただ目標を「設定」するだけでは不十分です。
その目標がメンバー一人ひとりの心に響き、「自分事」として捉えられ、日々の行動へと繋がって初めて、目標は達成への羅針盤となるのです。
「目標設定なんて、ただ上から言われた数字を割り振るだけでしょ?」
もしあなたがそう考えているなら、あなたのチームが目標を達成できない原因は、まさにそこにあります。
効果的な目標設定と、それをチームに浸透させるプロセスは、チームリーダーにとって最も重要な「技術」の一つなのです。
この記事では、「絵に描いた餅」で終わらない、メンバーを動かし、チームを成果へと導く「目標設定・共有・達成」の全技術を、具体的なフレームワークとステップで徹底解説します。
この記事でわかること
- なぜ明確な目標設定と共有がチームの成果に不可欠なのか
- 効果的な目標を設定するための「SMARTの法則」とその先にある重要要素
- 設定した目標をメンバーの「自分事」にし、達成へと導くための具体的な共有・進捗管理の方法
なぜ「目標設定」と「共有」がチームの成否を分けるのか?

そもそも、なぜチームに「目標」が必要なのでしょうか?
それは、目標がチームに対して果たす、4つの重要な機能があるからです。
① 明確な「羅針盤」:チームが進むべき方向を示す
チーム目標は、チーム全体が向かうべき「目的地」を示します。
この「羅針盤」がなければ、メンバーはそれぞれバラバラの方向に進んでしまい、チームとしての力は分散し、成果に繋がりません。
明確な目標があるからこそ、全員が同じ方向を向き、エネルギーを結集できるのです。
② モチベーションの「源泉」:「WHY」と「達成感」を生み出す
魅力的な目標は、メンバーの「やる気」を引き出す源泉となります。
「何のために頑張るのか(WHY)」が明確になり、目標達成という具体的なゴールが見えることで、日々の仕事に意味と目的意識が生まれます。
そして、目標を達成した時の「達成感」は、次の挑戦への強力なモチベーションとなります。
③ 行動と評価の「基準」:何をすべきか、何が評価されるかを明確にする
目標は、日々の業務において「何を優先すべきか」を判断するための「基準」となります。
目標達成に貢献する行動は何か、逆に貢献しない行動は何か。
これが明確になることで、メンバーは主体的に考え、行動を選択できるようになります。
また、目標達成度は、公平な評価を行う上での客観的な指標ともなります。
④ 一体感の「醸成」:共通のゴールに向かう仲間意識
同じ目標に向かって、メンバーがそれぞれの役割を果たし、協力し合う。
そのプロセスを通じて、「仲間意識」や「チームとしての一体感」が生まれます。
困難な目標であればあるほど、それを共に乗り越えた経験は、チームの結束力を強固なものにします。
「ダメな目標」と「良い目標」を分ける「SMART」の法則

では、チームを動かす「良い目標」とは、どのように設定すれば良いのでしょうか?
そのための最も有名で基本的なフレームワークが「SMART」の法則です。
S (Specific):具体的で明確か?
目標は、誰が読んでも同じ解釈ができるように、具体的で明確でなければなりません。
×「顧客満足度を向上させる」→ ○「〇〇製品の顧客満足度アンケートで、『満足』以上の評価を80%以上にする」
M (Measurable):測定可能か?(数値化できるか)
目標の達成度を客観的に測れるように、数値化されている必要があります。
×「もっと頑張る」→ ○「新規契約件数を月10件獲得する」
A (Achievable):達成可能か?(現実的か)
目標は、挑戦的であるべきですが、同時に現実的に達成可能な範囲でなければなりません。
到底達成不可能な目標は、メンバーのモチベーションを逆に下げてしまいます。
チームの実力やリソースを考慮して設定します。
R (Relevant):組織や個人の目標と関連しているか?
設定したチーム目標が、会社全体の目標や、メンバー個人の目標・キャリアプランと関連していることが重要です。
この関連性が見えることで、メンバーはチーム目標への貢献が、組織全体の成功や自分自身の成長にも繋がると感じられ、モチベーションが高まります。
T (Time-bound):期限が明確か?
「いつまでに」達成するのか、明確な期限が設定されている必要があります。
期限があるからこそ、人は計画を立て、集中して取り組むことができます。
×「売上を増やす」→ ○「今年度末(〇月〇日)までに、売上を前期比10%増加させる」
SMARTだけでは不十分?「共感」と「魅力」の重要性
SMARTの法則は、目標設定の「基本」として非常に有効です。
しかし、それだけでメンバーが動くとは限りません。
SMARTな目標に加えて、「共感できるか?」「魅力的か?(ワクワクするか?)」という感情的な要素も、目標がメンバーの「自分事」となるためには不可欠なのです。
成果を出すチームの「目標設定」3ステップ

SMARTと「共感・魅力」を踏まえ、効果的な目標を設定するための具体的なステップです。
ステップ①:現状分析と課題特定(どこに問題があるか?)
まず、チームの現状(強み・弱み、過去の実績など)を客観的に分析し、「目標達成に向けて、今、何が課題となっているのか」を特定します。
メンバー全員で現状認識を共有することが重要です。
ステップ②:チームビジョンと繋がる「魅力的な目標」を設定する(どこを目指すか?)
課題を踏まえ、チームとして「どうなりたいか」という理想像(ビジョン)を描き、それにつながる挑戦的で、かつ達成できたらワクワクするような「魅力的な目標」を設定します。
この段階で、SMARTの法則を適用し、具体的かつ測定可能な形に落とし込みます。
【具体例】悪い目標例 vs SMARTで魅力的な目標例
× 悪い目標例:「顧客からのクレームを減らす」
(Specificでない、Measurableでない、Time-boundでない、魅力的でない)
○ SMARTで魅力的な目標例:「お客様からの『ありがとう』の声をもっと増やし、〇〇(製品・サービス)のファンを増やすために、今年度下期(〇月〇日まで)に、顧客アンケートのNPS(推奨度)を現在の+10から+30へと向上させる!」
(具体的、測定可能、達成可能(?)、関連性あり、期限あり、かつポジティブで魅力的)
ステップ③:目標達成のための「具体的な行動計画」に落とし込む(どうやって達成するか?)
目標を設定しただけでは、何も変わりません。
その目標を達成するために、「誰が」「いつまでに」「何を」するのか、具体的な「行動計画(アクションプラン)」にまで落とし込み、役割分担を明確にします。
この行動計画が、日々の業務の指針となります。
「NPS+20」という数字に込められた想い
私たちのカスタマーサポートチームは、以前「クレーム件数削減」という目標を掲げていました。
しかし、メンバーの表情は暗く、「減点されないようにしよう」というネガティブな意識ばかりが先行していました。
そこで私は、目標設定の仕方を変えることに。
メンバーと話し合い、「私たちの仕事の価値は、お客様を『ファン』にすることだ」というビジョンを共有。
その上で、「顧客満足度(NPS)を+10から+30に上げる」というSMARTな目標を設定しました。
単なる数字ではなく、「ファンを増やす」というポジティブな意味合いを持たせたのです。
さらに、「そのために何ができるか?」をチームでブレストし、「問い合わせへの返信スピード向上」「FAQページの改善」「感謝を伝えるサンクスカード導入」といった具体的な行動計画に落とし込みました。
目標が「自分たちの手で作り上げたもの」になった瞬間、チームの空気が変わりました。
メンバーは主体的に改善活動に取り組み始め、半年後、NPSは目標を達成。
何より、メンバーの表情が以前とは比べ物にならないほど明るくなったのが、リーダーとして一番の喜びでした。
目標を「自分事」に。チームへの「浸透」と「合意形成」の技術

どんなに素晴らしい目標も、メンバーに「他人事」だと思われていては意味がありません。
目標をチームに浸透させ、「自分たちの目標だ」と感じてもらうための技術です。
① 「一方的な通達」ではなく「対話」を通じて共有する
目標設定のプロセス(現状分析、目標設定、行動計画)に、できるだけメンバーを巻き込み、彼らの意見を聞きながら進めることが理想です。
それが難しい場合でも、設定された目標の「背景」や「理由(WHY)」をリーダー自身の言葉で丁寧に説明し、メンバーからの質問や懸念に真摯に答える「対話」の場を必ず設けましょう。
② チーム目標と「個人目標」の連動性を明確にする
チーム全体の目標と、メンバー一人ひとりの目標(あるいは役割)が、どのように繋がっているのかを明確に示しましょう。
「自分のこの頑張りが、チーム目標のこの部分に貢献するんだ」という繋がりが見えることで、メンバーは自分の仕事に意味を見出しやすくなります。
③ 目標達成の「メリット」を具体的に示す(チーム・個人にとって)
目標を達成することで、チームや会社にとってどのような良いことがあるのか。
そして、メンバー個人にとっては、どのようなメリット(評価、成長、達成感など)があるのか。
目標達成の先にある「ポジティブな未来」を具体的に示すことで、メンバーのモチベーションを高めます。
④ 目標達成に向けた「プロセス」を共に描き、ワクワク感を醸成する
目標達成までの道のり(プロセス)を、メンバーと一緒に考え、計画する。
その過程で出てくるであろう困難や、それをどう乗り越えるか、そして達成した時の喜びなどを共有することで、「共に挑戦する仲間」としての一体感と、目標達成への「ワクワク感」を醸成します。
「絵に描いた餅」にしない!目標達成に向けた「進捗管理」と「協力体制」

目標を設定し、共有したら、次は「実行」と「管理」のフェーズです。
ここで息切れしないための仕組みが重要です。
① 定期的な「進捗確認ミーティング」の設定(頻度と内容)
目標に対する進捗状況を、チーム全体で定期的に確認する場を設けましょう。
(例:週次、月次)
単なる「報告会」ではなく、「順調な点は何か」「課題は何か」「その課題に対してどう協力できるか」を話し合う、前向きな対話の場とすることが重要です。
② 「見える化」による進捗共有(ダッシュボード、共有シート等)
目標達成に向けた主要な指標(KPI)や、各メンバーの行動計画の進捗状況などを、誰でもいつでも確認できるように「見える化」しましょう。
共有のダッシュボードやスプレッドシートなどを活用することで、チーム全体の状況が一目で分かり、目標への意識を常に高く保つことができます。
③ 課題発生時の「早期相談・協力」を促す文化(心理的安全性)
目標達成の過程では、必ず予期せぬ課題や困難が発生します。
そんな時、メンバーが一人で抱え込まず、早期にリーダーや他のメンバーに「相談」できる文化(心理的安全性)があるかどうかが、目標達成の鍵を握ります。
「問題報告=悪」ではなく、「早期相談=チームへの貢献」という認識を醸成しましょう。
④ 「軌道修正」を恐れない柔軟性
最初に立てた目標や行動計画が、状況の変化によって最適でなくなることもあります。
目標達成に固執するあまり、明らかに間違った方向に進み続けるのは愚策です。
定期的な進捗確認の中で、必要であれば目標や計画を柔軟に見直す勇気も必要です。
目標達成は「最高のチームビルディング」。成功を祝い、次へ繋げる

目標達成の瞬間は、チームにとって最高の瞬間です。
これを次への糧としましょう。
達成を「チーム全員」で祝い、承認し合う
目標を達成したら、チーム全員でその成功を祝い、互いの貢献を承認し合いましょう。
この「共に喜びを分かち合う」経験が、チームの結束力をさらに強め、次の挑戦へのモチベーションとなります。
成功要因と失敗要因を「振り返り(リフレクション)」、学びを次に活かす
祝いと同時に、「なぜ成功したのか(成功要因)」、「逆に、もっと上手くできた点はなかったか(失敗要因・改善点)」をチームで客観的に振り返る(リフレクション)ことも重要です。
この「学び」を形式知化し、次の目標設定やプロセス改善に活かすことで、チームは継続的に成長していくことができます。
「見える化」が生んだ、奇跡のラストスパート
私たちの営業チームは、四半期の売上目標達成に向けて苦戦していました。
残り1ヶ月。
目標達成率はまだ60%。
チーム内には諦めムードが漂い始めていました。
そこで私は、目標達成までの「残り金額」と「残り日数」、そして各メンバーの「現時点での貢献度(契約確度別の見込み額)」を、ホワイトボードに大きく書き出し、「見える化」しました。
さらに、毎日朝礼で、その数字を更新し、チーム全体で共有するようにしたのです。
すると、変化が起きました。
「あと〇〇円足りない!」「Aさんが大型契約決めそうだ!」「私も負けてられない!」
目標達成までの距離と、自分たちの現在地が「見える化」されたことで、メンバーの間に「なんとか達成したい!」という一体感と競争意識が生まれたのです。
最後の1週間は、まさに奇跡のようなラストスパートでした。
結果、私たちは最終日に目標を達成。
ホワイトボードの前で、チーム全員でハイタッチした時の興奮は忘れられません。
目標を「見える化」し、「共有」することの力を、身をもって体験しました。
まとめ:目標設定は「技術」。チームを動かす羅針盤を作ろう

チーム目標は、ただ掲げるだけでは「絵に描いた餅」にすぎません。
しかし、SMARTに、かつ魅力的に設定され、メンバーの「自分事」として共有され、進捗が適切に管理されれば、それはチームを動かす強力な「羅針盤」となり、驚くべき成果を生み出す原動力となります。
最後に、メンバーを動かす目標設定・達成の技術をまとめます。
- なぜ必要か?:方向性を示し、モチベーションを生み、行動基準となり、一体感を醸成する。
- 設定方法:「SMART」を基本に、「共感」「魅力」をプラス。
現状分析→目標設定→行動計画の3ステップ。 - 浸透方法:「対話」による共有、個人目標との連動、メリット提示、プロセス共創。
- 達成管理:定期的な進捗確認、見える化、早期相談文化、柔軟な軌道修正。
- 達成後:全員で祝い、振り返り、学びを次に活かす。
目標設定と共有は、リーダーに求められる最も重要な「技術」の一つです。




